本判決は、結婚の無効を求める訴訟において、当事者の心理的無能力を証明するための証拠基準に関する重要な判断を示しています。最高裁判所は、心理的無能力の立証には、単なる当事者の証言や心理鑑定人の意見だけでなく、より客観的で説得力のある証拠が必要であると判示しました。これは、感情的な不和や性格の不一致だけでは、結婚の無効を正当化するものではないことを意味します。

結婚生活の破綻：心理的無能力の証明はどこまで必要か

マニュエル・R・バクナワ3世（以下「マニュエル」）は、妻であるノラ・レイエス・バクナワ（以下「ノラ」）との婚姻の無効を求めて提訴しました。マニュエルは、自身とノラが結婚の基本的な義務を果たすための心理的な能力を欠いていると主張しました。地方裁判所はマニュエルの訴えを認めましたが、控訴院はこの判決を覆し、婚姻は有効であると判断しました。

最高裁判所は、マニュエルが提出した証拠は、彼とノラの婚姻を無効とするには不十分であると判断しました。裁判所は、マニュエルの証言、精神科医の診断、および心理評価報告書を検討しましたが、これらの証拠だけでは、両者が結婚の基本的な義務を履行する能力を欠いていることを十分に証明できないと判断しました。精神科医の診断は、マニュエル自身と長男へのインタビューに基づいており、客観性に欠けると見なされました。裁判所は、当事者の心理的状態を評価する際には、客観的な証拠が不可欠であると強調しました。配偶者の心理的無能力を立証するには、親族、友人、医師、弁護士など、当事者と密接な関係にある人物からの証言が有効です。これらの証言は、結婚当時または結婚後の出来事を通じて明らかになった、当事者の状態を示すものとなります。

最高裁判所は、心理的無能力の証明には、医学的な診断だけでなく、当事者の行動や関係性のパターンを示す客観的な証拠が必要であると指摘しました。マニュエルの場合、彼の性格的な問題は、客観的な心理テストによって裏付けられるべきでした。しかし、そのようなテストは実施されませんでした。カトリック教会の婚姻無効の決定は尊重されるものの、法的判断においては決定的なものではありません。最高裁判所は、カトリック教会の決定を尊重する一方で、法的判断においては、独自の基準と証拠に基づいて判断する必要があると強調しました。

本判決は、婚姻の無効を求める訴訟において、心理的無能力の証明が非常に困難であることを示しています。単に性格の不一致や感情的な問題があるだけでは、結婚を無効とすることはできません。裁判所は、結婚を神聖な契約と見なし、その無効を認めるためには、非常に明確で説得力のある証拠が必要であると考えています。結婚の無効を求める訴訟を提起する際には、専門家の助けを借り、十分な証拠を収集することが不可欠です。

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ソース：MANUEL R. BAKUNAWA III VS. NORA REYES BAKUNAWA, G.R. No. 217993, 2017年8月9日