フィリピンにおける労働協約(CBA)に基づく強制的な退職の有効性:企業が知っておくべきこと

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労働協約(CBA)に基づく強制的な退職は、一定の条件下で有効である

CAINTA CATHOLIC SCHOOL AND MSGR. MARIANO T. BALBAGO, PETITIONERS, VS. CAINTA CATHOLIC SCHOOL EMPLOYEES UNION (CCSEU), RESPONDENT. G.R. NO. 151021, May 04, 2006

はじめに

フィリピンでは、労働者の権利は法律で強く保護されていますが、企業は経営上の必要性から従業員を退職させる権利も有しています。労働協約(CBA)は、労使間の合意事項を定める重要な文書であり、退職に関する規定も含まれることがあります。しかし、CBAに基づく退職が常に有効とは限りません。本稿では、Cainta Catholic School事件を基に、CBAに基づく強制的な退職の有効性について解説します。

法的背景

労働法第287条は、退職に関する規定を定めています。この条文では、CBAまたはその他の雇用契約において退職年齢が定められている場合、その規定に従うことができるとされています。ただし、CBAに基づく退職給付は、法律で定められた最低限の給付額を下回ってはなりません。CBAに退職に関する規定がない場合、従業員は60歳以上65歳以下の年齢で、少なくとも5年間勤務していれば退職することができます。この場合、退職金は、1年間の勤務につき月給の2分の1以上となります。

重要な条文を以下に引用します。

「労働法第287条 退職

従業員は、労働協約またはその他の適用される雇用契約で定められた退職年齢に達した場合に退職することができます。

退職の場合、従業員は、既存の法律および労働協約その他の合意に基づいて取得した退職給付を受け取る権利を有する。ただし、労働協約その他の合意に基づく従業員の退職給付は、本法に規定されている額を下回ってはならない。

事業所に退職金制度または従業員の退職給付に関する合意がない場合、従業員は、60歳以上(ただし、65歳を超えないものとする。65歳は強制退職年齢とする)で、当該事業所に少なくとも5年間勤務している場合、退職することができ、1年間の勤務につき月給の2分の1以上の退職金を受け取る権利を有する。6ヶ月以上の端数は1年とみなす。」

過去の判例では、Pantranco North Express, Inc. v. NLRC事件において、最高裁判所は、CBAにおいて60歳未満の退職年齢を定めることを認めています。また、Progressive Development Corporation v. NLRC事件では、年齢に関係なく20年以上の勤務年数がある従業員を退職させることを認めるCBAの規定を有効と判断しました。

事件の概要

Cainta Catholic School事件では、学校と労働組合の間で締結されたCBAに、従業員が60歳に達するか、または20年以上の勤務年数がある場合に退職させることができるという規定がありました。学校は、労働組合の役員であるLlagasとJavierが20年以上の勤務年数があることを理由に退職させました。労働組合は、これが不当労働行為であるとして訴えましたが、最高裁判所は、CBAに基づく退職は有効であると判断しました。

事件の経緯は以下の通りです。

  • 1986年3月6日:学校と労働組合の間でCBAが締結される。
  • 1993年10月15日:学校がLlagasとJavierを退職させる。
  • 1993年10月18日:労働組合がストライキ予告を提出する。
  • 1993年11月8日:労働組合がストライキを行う。
  • 1993年11月11日:労働大臣が労働紛争をNLRCに付託する。
  • 1997年1月31日:NLRCが学校に有利な判決を下す。
  • 2001年8月20日:控訴裁判所がNLRCの判決を覆す。
  • 2006年5月4日:最高裁判所が控訴裁判所の判決を覆し、NLRCの判決を復活させる。

最高裁判所は、以下の点を重視しました。

  • CBAは労使間の合意に基づいて締結されたものであり、その規定は尊重されるべきである。
  • CBAに基づく退職は、法律で認められた経営上の権利の行使である。
  • 労働組合の役員であるという理由だけで、退職が不当労働行為となるわけではない。

最高裁判所は、以下のように述べています。

「CBAの受諾により、労働組合とその組合員は、経営側に譲歩することに合意した約束と制限を遵守する義務がある。問題となっている退職規定は、労働組合に押し付けられたものと見なすことはできない。労働組合は、経営側が少なくとも20年の勤務年数のある従業員を退職させることを認めることに合意することを拒否する権利を十分に有していた。」

「従業員を退職させる有効かつ正当に確立された経営側の特権の行使は、不当労働行為を構成しないという原則を支持することができる。」

実務上の意義

本判決は、CBAに基づく退職の有効性に関する重要な先例となります。企業は、CBAに退職に関する規定を設けることで、経営上の必要性に応じて従業員を退職させることが可能になります。ただし、CBAの規定は、法律で定められた最低限の要件を満たしている必要があり、また、従業員の権利を不当に侵害するものであってはなりません。

重要な教訓

  • CBAは、労使間の権利義務を明確に定める重要な文書である。
  • CBAに基づく退職は、一定の条件下で有効である。
  • 企業は、CBAの規定を遵守し、従業員の権利を尊重する必要がある。

よくある質問

Q:CBAに退職に関する規定がない場合、従業員を退職させることはできますか?

A:はい、労働法第287条に基づき、従業員が60歳以上65歳以下で、少なくとも5年間勤務していれば退職させることができます。この場合、退職金は、1年間の勤務につき月給の2分の1以上となります。

Q:CBAに基づく退職が不当労働行為となるのはどのような場合ですか?

A:労働組合の活動を妨害する目的で退職が行われた場合や、退職の理由が不当である場合などです。

Q:退職金の計算方法を教えてください。

A:CBAに退職金の計算方法が定められている場合は、その規定に従います。CBAに規定がない場合は、労働法第287条に基づき、1年間の勤務につき月給の2分の1以上となります。

Q:退職後の健康保険はどうなりますか?

A:退職後の健康保険については、CBAまたはその他の雇用契約に規定がある場合は、その規定に従います。規定がない場合は、法律で定められた範囲で健康保険が提供される場合があります。

Q:退職に関する紛争が発生した場合、どうすればよいですか?

A:まずは、労使間で話し合いを行い、解決を目指してください。話し合いで解決しない場合は、労働省またはNLRCに仲裁を申し立てることができます。

ASG Lawは、フィリピンの労働法に関する専門知識を有しており、お客様のビジネスをサポートいたします。ご不明な点やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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Source: Supreme Court E-Library

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