株式譲渡の未登録は無効:会社解散における株主の権利を守るために
[G.R. No. 112941, February 18, 1999] NEUGENE MARKETING INC. VS. COURT OF APPEALS
企業の株式譲渡は、単なる当事者間の合意だけでは完了しません。フィリピン最高裁判所のNeugene Marketing Inc.対控訴院事件は、株式譲渡が会社の株式名簿に登録されない限り、第三者に対抗できないという重要な原則を明確にしました。この判例は、企業が解散する際の株主の権利、特に必要な賛成票数を判断する上で、株式名簿の重要性を強調しています。株式譲渡の手続きを怠ると、意図しない結果を招き、企業の運営に重大な影響を与える可能性があります。
株式譲渡と会社法:フィリピンの法的枠組み
フィリピン会社法典第63条は、株式譲渡の有効性について明確な規定を設けています。この条項によれば、株式譲渡は当事者間では有効ですが、会社および第三者に対して有効となるためには、会社の株式名簿に登録される必要があります。条文を直接見てみましょう。
会社法典第63条:
「株式の譲渡は、当事者間においては有効とする。ただし、会社に対しては、譲渡が(a)取締役の指示による場合、または(b)譲渡人またはその代理人による場合、および(c)譲受人の氏名、住所、譲渡された株式数または株式の種類、および譲渡の期日を記録した会社の帳簿に登録されるまでは、有効とはならないものとする。」
この規定は、株式譲渡の二重の有効性を定めています。当事者間では譲渡契約が成立した時点で有効となりますが、会社や第三者(他の株主や債権者など)に対して権利を主張するためには、株式名簿への登録が不可欠です。登録によって、会社は誰が正式な株主であるかを把握し、株主総会での議決権行使や配当の支払いなどを適切に行うことができます。
また、会社法典第118条は、会社の任意解散に必要な株主の賛成について規定しています。原則として、発行済株式総数の3分の2以上の賛成が必要とされています。この賛成票数を計算する際、誰が株主であるかを判断する基準となるのが、まさに株式名簿なのです。
今回のNeugene Marketing Inc.事件では、この会社法典第63条と第118条が重要な役割を果たしました。株式譲渡が株式名簿に登録されていなかったことが、解散決議の有効性を左右する決定的な要素となったのです。
Neugene Marketing Inc.事件の経緯:株式譲渡と解散決議の攻防
Neugene Marketing Inc.は、1978年に設立された貿易会社でした。設立当初からの株主には、後に訴訟の当事者となるリー氏、スン氏、シー氏などがいました。時が経ち、会社の経営を巡って株主間で対立が深まり、最終的に会社解散の是非が争われることになります。
事件の背景には、複雑な株式譲渡の経緯がありました。スン氏、シー氏、ヤン氏(以下、私的回答者)は、保有していた株式を白地裏書でウイ一族に譲渡したと主張しました。しかし、この譲渡は会社の株式名簿には登録されていませんでした。その後、私的回答者は株主総会を開催し、会社の解散を決議しました。これに対し、リー氏らは、自身らがスン氏らから株式を譲り受けたとして、解散決議の無効を訴えました。リー氏らは、株式譲渡は有効であり、解散決議時に必要な3分の2以上の賛成票は得られていないと主張したのです。
訴訟は、証券取引委員会(SEC)から始まり、控訴院、そして最高裁判所へと進みました。各審級での判断は以下の通りです。
- 証券取引委員会(SEC):リー氏らの主張を認め、解散決議を無効としました。SECは、株式譲渡は有効であり、解散決議時に私的回答者は必要な議決権数を保有していなかったと判断しました。
- 控訴院:SECの決定を覆し、解散決議を有効としました。控訴院は、株式譲渡は株式名簿に登録されておらず、会社に対して有効とは言えないと判断しました。また、リー氏らが株式譲渡の対価を支払っていない点も重視しました。
- 最高裁判所:控訴院の決定を支持し、上告を棄却しました。最高裁判所は、控訴院の判断を是認し、株式名簿の重要性を改めて強調しました。
最高裁判所は、控訴院の判決を支持する理由として、以下の点を挙げました。
「株式譲渡を有効とするためには、株券が交付され、その交付が株券の譲受人を構成する意図と結びついていなければならない。(Fetcher Cyc Corp., Sec. 5484)」
さらに、最高裁判所は、株式譲渡の対価が支払われていない点、および株式譲渡が株式名簿に登録されていない点を指摘し、リー氏らの株式取得は有効ではないと結論付けました。
「控訴院が強調したように、問題の株式譲渡が会社の帳簿に記録されたという証拠が全くないという単純な理由から、問題の株式譲渡は有効かつ効果的であり得ない。」
これらの理由から、最高裁判所は、解散決議は有効であり、Neugene Marketing Inc.は適法に解散されたと判断しました。
実務上の教訓:株式譲渡と企業運営における注意点
Neugene Marketing Inc.事件は、企業運営において株式譲渡の手続きを正しく行うことの重要性を改めて示しました。この判例から得られる実務上の教訓は多岐にわたりますが、特に重要な点を以下にまとめます。
- 株式譲渡は株式名簿への登録が必須:株式譲渡契約を締結しただけでは、会社や第三者に対して株主としての権利を主張することはできません。必ず会社の株式名簿に譲渡を登録する必要があります。
- 株式名簿の正確な管理:会社は、株式名簿を正確に管理し、株主の異動を迅速に反映させる必要があります。株式名簿は、株主の権利を確定するための最も重要な証拠となります。
- 譲渡の対価の支払い:株式譲渡を有効とするためには、原則として譲渡の対価が支払われる必要があります。無償譲渡や名義貸しのようなケースでは、譲渡の有効性が争われる可能性があります。
- 解散決議における株主の確認:会社解散などの重要な決議を行う際には、株式名簿に基づいて株主を確定し、必要な賛成票数を正確に計算する必要があります。
- 専門家への相談:株式譲渡や会社解散の手続きは複雑であり、法的な専門知識が必要です。不明な点や不安な点があれば、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
よくある質問(FAQ)
- Q1. 株式名簿とは何ですか?なぜ重要なのですか?
- A1. 株式名簿は、会社が株主の情報を記録・管理するための法定帳簿です。株主の氏名、住所、保有株式数、株式の譲渡履歴などが記載されます。株式名簿は、株主の権利を確定し、会社運営を円滑に行う上で非常に重要な役割を果たします。
- Q2. 株式譲渡の手続きはどのように行うのですか?
- A2. 一般的な株式譲渡の手続きは、以下の通りです。(1)譲渡契約の締結、(2)株券の交付、(3)会社への譲渡通知、(4)株式名簿への登録。会社によって手続きが異なる場合があるため、事前に会社の定款や内規を確認することが重要です。
- Q3. 株式譲渡が株式名簿に登録されないとどうなりますか?
- A3. 株式譲渡が株式名簿に登録されない場合、譲受人は会社や第三者に対して株主としての権利を主張できません。議決権の行使、配当の受領、株主代表訴訟の提起などが制限される可能性があります。
- Q4. 会社解散の決議に必要な株主の賛成数は?
- A4. フィリピン会社法典では、任意解散の場合、原則として発行済株式総数の3分の2以上の賛成が必要です。ただし、定款でより高い賛成数を定めている場合は、定款の規定が優先されます。
- Q5. 株式譲渡の有効性について争いが生じた場合、どのように解決すればよいですか?
- A5. 株式譲渡の有効性に関する争いは、訴訟によって解決する必要があります。証拠を収集し、弁護士に相談の上、適切な法的措置を講じることが重要です。
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出典: 最高裁判所電子図書館
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