最高裁判所は、PSALM(Power Sector Assets and Liabilities Management Corporation)の職員とその扶養家族に支給された医療費補助(MAB)の違法性を認め、関連する役員と従業員に返還を命じました。これは、行政命令402号(AO 402)に規定された医療チェックアッププログラムを超える給付であり、その範囲を超えるものでした。今回の判決は、政府機関による医療費補助の範囲を明確にし、予算と法律の遵守を徹底するものです。
医療費補助の範囲はどこまで?PSALM職員への給付金問題を解説
この事件は、PSALMが職員に提供した医療費補助の範囲が、行政命令402号(AO 402)に規定された医療チェックアッププログラムを超えているかどうかが争点となりました。PSALMは、当初、年間の医療チェックアッププログラムを提供していましたが、その後、処方薬の購入、緊急時の医療費払い戻し、歯科・眼科治療など、給付の範囲を拡大しました。しかし、監査委員会(COA)は、これらの追加給付がAO 402の範囲を超えるとして、その違法性を指摘しました。裁判所は、COAの判断を支持し、AO 402が意図する医療チェックアッププログラムの範囲を明確にしました。これにより、政府機関は、医療費補助を提供する際に、法律の範囲内で適切に予算を管理し、透明性を確保する必要があります。
2008年と2009年、PSALMは取締役会決議第07-67号および第2008-1124-004号に基づき、医療費補助(MAB)を拡大しました。当初の医療支援は、身体検査、胸部X線、尿検査、糞便検査、血液検査、心電図、子宮頸部細胞診、血液化学検査、歯科検査といった診断手順に限定されていました。しかし、拡大された医療支援では、緊急時の市販薬の購入、処方薬、歯科・眼科治療、緊急時や特別なケースでの費用の払い戻し、診断や相談料の払い戻しなども含まれるようになりました。さらに、この支援の対象者は従業員の扶養家族(配偶者、子孫、先祖)や、取締役会のメンバー、委員会メンバーにも拡大されました。これらの拡大された医療支援は、AO 402の第3条に基づいて正当化されるとPSALMは主張しました。
しかし、裁判所はPSALMの主張を認めませんでした。裁判所は、AO 402の第1条が定めるのは、あくまで年間の医療チェックアッププログラムであると指摘しました。このプログラムは、個人の健康状態を把握し、病気やそのリスクを発見するための手順を定めたものです。したがって、AO 402は、身体検査、胸部X線、尿検査、糞便検査、血液検査、心電図といった診断手順を明確に指定しています。COAは、この基準がすべての政府所有・管理会社(GOCC)によって厳格に遵守されるべきであると判断しました。裁判所もこの判断を支持し、初期の医療支援だけでなく、資金が利用可能になった場合に追加されるすべての支援についても、同様の基準を適用すべきであるとしました。
さらに、2008年のMABについては、PSALMの2008年度の企業運営予算が3,350,000ペソであったにもかかわらず、Board Resolution No. 07-67に基づく拡大された給付の総支出額は5,702,517.00ペソに達していたと指摘されました。これにより、資金の利用可能性を超えた給付が行われていたことが明らかになりました。裁判所は、これらの点を考慮し、PSALMによる医療支援の拡大がAO 402の範囲を超えており、違法であると結論付けました。
また、AO 402が対象とするのは政府職員のみであることも重要なポイントでした。しかし、PSALMの取締役会決議第07-67号では、医療支援の対象が職員だけでなく、「資格のある扶養家族」にも拡大されていました。裁判所は、法律で明確に定められていない場合、その範囲を拡大することはできないと判断しました。これらの理由から、裁判所はCOAの判断を支持し、PSALMの医療支援の拡大を違法としました。裁判所の結論として、COAの決定を支持し、2008年と2009年のMABに基づいてPSALMの役員と従業員に支払われた金額の払い戻しを命じました。
FAQs
この訴訟の核心的な問題は何でしたか? | 問題は、PSALMが従業員に提供した医療給付が、AO 402で許可された範囲を超えていたかどうかでした。COAは、給付金が医療チェックアップの範囲を超えていると判断しました。 |
AO 402とは何ですか? | 行政命令402号は、政府職員のための年次健康診断プログラムを確立するフィリピンの法律です。このプログラムは、健康診断および診断手順を目的としています。 |
なぜCOAはPSALMの給付金を認めなかったのですか? | COAは、PSALMが診断手順を超えて、市販薬、処方薬、歯科および眼科治療などの費用をカバーするために給付金を拡大したと判断しました。COAはまた、扶養家族に給付を拡大したこともAO 402に違反していると判断しました。 |
裁判所はPSALM職員が拡大された給付を受ける権利があると判断しましたか? | いいえ、裁判所は、PSALMの給付金拡大には法的根拠がないと判断しました。裁判所は、AO 402がカバーするのは医療チェックアップだけであり、それ以上の医療給付は認められていないと判断しました。 |
取締役はどのように関与しましたか? | PSALMの取締役は、2008年と2009年に違法な給付金を承認しました。そのため、裁判所はこれらの役員に対し、給付金の金額を返還する責任があると判断しました。 |
従業員は不法な給付金を返還しなければなりませんか? | はい、従業員は受け取った不法な金額を返還しなければなりません。これは、権利なしに受け取ったものが誤って提供された場合、返還の義務が生じるという、不当利得の原則に基づいています。 |
今回の訴訟では、善良な動機は関係ありますか? | 裁判所は、一部の役員が善良な動機で行動していた可能性を認めましたが、法律の誤りにより違法な給付金を支払ったため、払い戻しが依然として必要であると判断しました。 |
判決における「業務遂行事実」の原則は何ですか? | これは、無効と判断された法律や行動が、遡って無効にされない可能性があることを定めています。ただし、この原則は、AO 402自体に準拠しているかどうかを裁判所が評価した、PSALMの理事会決議には適用されませんでした。 |
今回の最高裁判所の判決は、政府機関における医療費補助の範囲を明確にし、法律の遵守と予算管理の重要性を強調するものです。政府機関は、法律の範囲内で適切な給付を提供し、職員の福祉を向上させる必要があります。そのためには、透明性の高い予算管理と、法律の適切な解釈が不可欠です。
本判決の特定の状況への適用に関するお問い合わせは、ASG Law(お問い合わせ)またはメール(frontdesk@asglawpartners.com)でご連絡ください。
免責事項:この分析は情報提供のみを目的としており、法的助言を構成するものではありません。お客様の状況に合わせた具体的な法的ガイダンスについては、資格のある弁護士にご相談ください。
出典:Power Sector Assets and Liabilities Management Corporation v. Commission on Audit, G.R. No. 205490 & 218177, 2020年9月22日