船員の障害補償:会社指定医の評価義務と完全障害認定

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最高裁判所は、船員の障害補償請求に関する重要な判決を下しました。会社指定医が一定期間内に最終的な障害評価を怠った場合、船員は完全な永久障害とみなされるというものです。この決定は、船員が適切な補償を受けられるよう、雇用主と船員の両方に対する明確な義務を定めています。

会社指定医の遅延:船員の権利侵害?

本件は、ダリオ・A・カルセド氏が乗船中に負傷し、本国送還されたことに端を発します。会社指定医は当初、カルセド氏の障害を8%と評価しましたが、治療はその後も継続され、最終的な評価は下されませんでした。カルセド氏は、完全かつ永久的な障害補償を求めましたが、会社側はこれに異議を唱えました。裁判所は、カルセド氏が会社指定医による最終的な評価を受けられなかったため、完全な永久障害とみなされるべきだと判断しました。

この判決は、船員と雇用者の両方に重要な影響を与えます。まず、会社指定医は、船員の本国送還後、一定期間内(通常は120日、必要に応じて240日まで延長)に、船員の障害を評価する義務があります。この期間内に最終的な評価がなされない場合、船員は法律上、完全かつ永久的な障害とみなされます。これは、船員がそれまでの一時的な障害から、完全かつ永久的な障害へと移行することを意味します。次に、船員は、会社指定医の評価に同意しない場合、第三の医師による評価を求める権利があります。この第三の医師の判断は、最終的なものとなります。

さらに、本判決は、障害の評価方法についても明確な指針を示しています。裁判所は、POEA-SEC(フィリピン海外雇用庁標準雇用契約)CBA(団体交渉協約)の規定は、労働法およびAREC(従業員補償に関する改正規則)と照らし合わせて解釈されなければならないと述べています。つまり、POEA-SECやCBAに記載された障害等級表は、あくまでも参考であり、船員の実際の労働能力を考慮して判断されるべきということです。例えば、POEA-SECの障害等級が低い場合でも、船員が以前と同じ仕事に就くことができない場合や、120日または240日を超えて就労不能な状態が続く場合には、完全かつ永久的な障害と認定される可能性があります。

本判決の背景には、船員保護という重要な原則があります。船員は、過酷な労働環境や海外での勤務を強いられることが多く、傷病を負うリスクが高い職業です。そのため、法律は船員の権利を保護し、適切な補償を受けられるようにする必要があります。本判決は、会社指定医が適切な評価を行わない場合に、船員が完全な永久障害とみなされることを明確にすることで、船員の権利保護を強化するものです。最高裁は、本件で会社側の医師による障害の程度評価は、カルセド氏が2009年3月24日以降も医学的治療を必要としたため、暫定的なものだったと判断しました。

最後に、本判決は、船員とその雇用主に対し、紛争解決のための第三者医師の選任の重要性を改めて強調しています。会社指定医の評価に同意できない場合、船員は会社側と協力して第三の医師を選任し、その医師の判断に従うことができます。この手続きは、裁判所での争いを避けるための有効な手段となります。しかし、本件では、会社側が会社指定医による最初の評価が最終的なものだと主張したため、第三者医師の選任は行われませんでした。

FAQs

この訴訟の核心的な問題は何でしたか? 本件は、会社指定医が最終的な障害評価を適時に行わなかった場合に、船員が完全な永久障害補償を受ける権利があるかどうかという点が争われました。
会社指定医の義務は何ですか? 会社指定医は、船員の本国送還後、一定期間内(通常120日、延長で240日)に、船員の障害を評価し、最終的な評価を提示する義務があります。
会社指定医の評価に同意できない場合、船員はどうすればよいですか? 船員は、会社側と協力して第三の医師を選任し、その医師に評価を依頼する権利があります。第三の医師の判断は、最終的なものとなります。
「完全かつ永久的な障害」とはどういう意味ですか? 完全かつ永久的な障害とは、船員が以前と同じ仕事に就くことができず、長期間(120日または240日以上)にわたって就労不能な状態が続くことを意味します。
本判決は船員にどのような影響を与えますか? 本判決により、会社指定医が最終的な評価を怠った場合でも、船員は完全な永久障害補償を受けられる可能性が高まります。
本判決は雇用主にどのような影響を与えますか? 本判決は、雇用主に対し、会社指定医による適時かつ適切な障害評価を確保するよう求めます。評価が遅れた場合、雇用主は完全な永久障害補償の支払いを余儀なくされる可能性があります。
POEA-SECとCBAの障害等級表はどのように解釈されますか? POEA-SECとCBAの障害等級表は、労働法およびARECと照らし合わせて解釈されます。船員の実際の労働能力を考慮して、障害等級が判断されるべきです。
カルセド氏が最終的に受け取った補償金額はいくらでしたか? カルセド氏は最終的に、148,500米ドルの完全な障害補償を受け取りました。

本判決は、フィリピンの船員法における重要な進展であり、船員の権利保護を強化するものです。今後、同様の紛争においては、本判決が重要な参考となるでしょう。

特定の状況への本判決の適用に関するお問い合わせは、ASG Law(お問い合わせ)または(frontdesk@asglawpartners.com)までご連絡ください。

免責事項:この分析は情報提供のみを目的としており、法的助言を構成するものではありません。お客様の状況に合わせた具体的な法的助言については、資格のある弁護士にご相談ください。
出典:DARIO A. CARCEDO VS. MAINE MARINE PHILIPPINES, INC., G.R No. 203804, 2015年4月15日

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