裁判所書記官による過剰な謄写料金請求:不適切な慣行に対する最高裁判所の警告

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裁判所書記官による過剰な謄写料金請求:公務員倫理違反と見なされる行為

A.M. No. P-96-1220, 平成10年2月27日

はじめに

裁判所の手続きにおいて、裁判記録の正確な謄写は不可欠です。しかし、この重要な職務を担う裁判所書記官が、規定外の料金を請求した場合、 justice(正義)は損なわれる可能性があります。本稿では、フィリピン最高裁判所の判例、デ・グズマン対バガディオング事件(De Guzman v. Bagadiong)を分析し、裁判所書記官による不適切な料金請求が、公務員としての義務違反となる事例を解説します。この判例は、法曹関係者だけでなく、裁判手続きに関わるすべての人々にとって重要な教訓を含んでいます。

法的背景:裁判所書記官の職務と料金規定

フィリピンの裁判所規則141条10項および行政通達31-90号は、裁判所書記官が謄写料金として請求できる金額を明確に定めています。具体的には、上訴提起前は1ページあたり5ペソ、上訴提起後は3ペソと定められています。この規定は、裁判記録の謄写が国民の権利であることを保証し、不当な料金請求から国民を保護することを目的としています。裁判所規則136条17項および行政通達24-90号は、裁判所書記官に速やかな謄写と記録への添付を義務付けており、謄写業務は書記官の「付加的な」職務ではなく、中心的な職務の一部であることを明確にしています。

重要な条文を引用します。

裁判所規則141条10項(行政通達31-90号により改正)

第10条 書記官 ― 書記官は、謄写を請求するすべての者に対し、以下の料金の支払いを条件として、自らが作成した記録の謄写を提供するものとする。(a)上訴提起前は、250語以上を含む1ページあたり5ペソ、(b)上訴提起後は、同ページあたり3ペソ。料金の総額の半分は裁判所に、残りの半分は当該書記官に支払われるものとする。

この規定に違反した場合、行政責任を問われることは明らかです。裁判所書記官は、定められた料金以外を請求することは許されません。また、裁判記録は公文書であり、裁判所の許可なく持ち出すことは禁じられています。

事件の概要:デ・グズマン対バガディオング事件

本件の原告であるデ・グズマンは、マニラ地方裁判所第43支部(担当:ロレンソ裁判官)に所属する裁判所書記官バガディオングから、刑事事件の審理記録謄写を請求された際、1ページあたり21ペソという高額な料金を請求されました。これは、規定料金である5ペソを大幅に上回る金額でした。デ・グズマンは、この料金が適正かどうか疑問に思い、裁判所に苦情を申し立てました。バガディオングは、料金が高額になった理由として、シングルスペースでの作成、自宅での作業、緊急対応などを挙げました。また、通常のダブルスペースであれば1ページあたり10ペソ、時間的な余裕があれば規定料金で対応すると主張しました。さらに、バガディオングは、謄写業務は書記官の付加的な業務であり、あたかも個人的な取引であるかのように主張しました。

裁判所管理官室(OCA)は当初、バガディオングに対し、1,000ペソの罰金と厳重注意処分を勧告しましたが、バガディオングが追加の弁明を行った後、OCAは停職3ヶ月の処分を勧告しました。最高裁判所は、OCAの勧告を支持し、バガディオングの行為を公務員としての重大な義務違反と認定しました。

最高裁判所は判決の中で、以下の重要な点を強調しました。

「裁判官の職務は神聖な任務である。その職務と責任の性質上、司法に関与するすべての者は、公的職務は公的信託であり、すべての公務員は常に国民に責任を負い、最大限の責任、誠実さ、忠誠心、効率性をもって国民に奉仕しなければならないという1987年憲法に荘厳に謳われた原則を忠実に遵守し、不可侵のものとして保持し、強化しなければならない。司法の運営に関与するすべての者の側における、公的責任の規範に違反し、国民の司法に対する信頼を損なう、あるいは損なう傾向のあるいかなる行為、作為、不作為も非難し、決して容認しない。」

また、最高裁判所は、ロダス対アキリザン事件(Rodas v. Aquilizan)の判例を引用し、裁判所書記官の職務は、単なる個人的な好意ではなく、公的サービスとしての義務であることを改めて強調しました。

実務上の教訓:裁判所書記官と謄写料金

本判例から、裁判所書記官は、定められた料金規定を厳守し、不当な料金請求を行ってはならないことが明確になりました。裁判所書記官による過剰な料金請求は、単なる料金トラブルではなく、公務員倫理に反する重大な不正行為と見なされます。裁判所書記官は、公的サービスを提供する者としての自覚を持ち、規定料金を遵守し、公正な職務遂行に努める必要があります。

一般市民が裁判記録の謄写を請求する際には、料金規定を確認し、不当な料金請求を受けた場合は、裁判所またはOCAに苦情を申し立てる権利があります。裁判手続きの透明性と公正性を維持するためには、このような不正行為を見過ごさず、適切な対応を取ることが重要です。

主な教訓

  • 裁判所書記官は、謄写料金として定められた金額以上を請求することはできない。
  • 裁判所書記官による過剰な料金請求は、公務員倫理違反として懲戒処分の対象となる。
  • 裁判記録の謄写は、裁判所書記官の重要な職務の一部であり、単なる付加的な業務ではない。
  • 一般市民は、不当な料金請求を受けた場合、裁判所またはOCAに苦情を申し立てる権利を有する。

よくある質問(FAQ)

  1. Q: 裁判所書記官に謄写を依頼する場合、料金はどのように計算されますか?
    A: フィリピンの裁判所規則で定められた料金に基づいて計算されます。上訴提起前と上訴提起後で料金が異なります。
  2. Q: 裁判所書記官から規定外の料金を請求された場合、どうすればよいですか?
    A: まず、裁判所の担当部署または裁判所管理官室(OCA)に苦情を申し立ててください。証拠となる資料(請求書など)を保管しておくことが重要です。
  3. Q: 裁判所書記官が自宅で謄写作業を行うことは問題ありませんか?
    A: 原則として、裁判記録は裁判所内で管理されるべきです。裁判記録を裁判所外に持ち出す場合は、裁判所の許可が必要です。本判例でも、裁判所書記官が許可なく記録を持ち出したことが問題視されました。
  4. Q: 謄写料金の規定はどこで確認できますか?
    A: フィリピン最高裁判所のウェブサイトまたは裁判所規則集で確認できます。また、裁判所の窓口でも問い合わせることができます。
  5. Q: 裁判所書記官の不正行為は、他にどのようなものがありますか?
    A: 謄写料金の不正請求以外にも、職務怠慢、職権濫用、金銭の不正流用などが考えられます。これらの行為も公務員倫理に反する重大な不正行為であり、懲戒処分の対象となります。

ASG Lawは、フィリピン法務における豊富な経験と専門知識を有する法律事務所です。本稿で解説した裁判所書記官の不正行為に関する問題を含め、法的手続きや公務員倫理に関するご相談は、ASG Lawにお任せください。専門家がお客様の状況を丁寧にヒアリングし、最適な法的アドバイスとサポートを提供いたします。お気軽にお問い合わせください。

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