船員の障害: 会社指定医師の評価と第三者医師の役割

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本判決は、海外で就労中に負傷したフィリピン人船員の障害補償請求に関する最高裁判所の判決です。会社指定医師の診断と、船員が独自に選んだ医師の診断が異なる場合、第三者の医師の意見が重要になります。最高裁は、第三者の医師が発行する障害評価は、最終的かつ決定的なものでなければ、両当事者を拘束しないと判断しました。さらに、たとえ部分的な障害の評価であっても、船員が240日以上就労不能であった場合、法的には完全かつ永久的な障害と見なされる可能性があると判示しました。

事故後のリハビリ、いつまで続く?第三者医師の診断を巡る攻防

2012年、レイナルド・スニット氏は、DOF OSMマリタイム・サービスA/Sの現地代理店であるOSMマリタイム・サービス社から、アブル・ボディ船員として「スカンジ・テクセル」号に乗船する契約を受けました。契約期間中、スニット氏は船のタンクから約4.5メートルの高さから転落し、右大腿骨を骨折する重傷を負いました。オランダの病院で治療を受けた後、メディカル・リパトリエーション(医療目的での帰国)のため、フィリピンへ帰国。帰国後、OSMマリタイム社が指定した医師の診察を受けた結果、「右大腿骨骨折、髄内釘固定術後」と診断されました。

スニット氏は、会社指定医師の診断に不満を抱き、他の医師の意見を求めました。しかし、2人の医師の診断結果が異なったため、紛争解決のため第三者の医師の意見を仰ぐことになりました。第三者の医師はスニット氏にグレード9の障害を推奨しましたが、「まだ就業に適しておらず、リハビリを受けるべきである」と述べました。この「就業不適格」という評価と、240日を超える就労不能期間が、裁判所の判断を左右する重要な要素となりました。本件の争点は、スニット氏が完全かつ永久的な障害給付を受ける資格があるかどうかでした。

本判決において重要な点は、会社指定医師だけでなく、第三者医師の評価も、船員の労働能力に与える影響を最終的に判断するものでなければならないということです。最高裁は、第三者医師の評価が最終的なものでない場合、その評価は拘束力を持たないと判断しました。さらに、POEA-SEC(フィリピン海外雇用庁標準雇用契約)および労働法に基づいて、船員が負傷または病気のために240日以上就労不能となった場合、たとえ部分的な障害の評価があったとしても、法的には完全かつ永久的な障害と見なされると判示しました。

この判断の根拠として、最高裁は労働法、従業員補償に関する改正規則(AREC)、およびPOEA-SECの関連条項を詳細に検討しました。特に、POEA-SEC第20条(A)(3)に基づき、会社指定医師による診断が不十分な場合、第三者医師の意見を求めることが可能であると強調しました。最高裁は、Vergara v. Hammonia Maritime Services, Inc.事件を引用し、120日の期間(または最大240日まで延長可能)内に会社指定医師が船員の障害を評価する必要があると指摘しました。

判決では、たとえ障害等級が部分的なものであっても、船員が通常の業務を240日以上遂行できない場合、法的には完全かつ永久的な障害と見なされることを明確にしました。この判断は、Kestrel Shipping Co., Inc. v. Munar事件で確立された原則に基づいています。最高裁は、スニット氏の障害が240日を超えており、第三者医師が最終的な評価を下していないことを考慮し、彼を完全かつ永久的な障害者と認定しました。その結果、スニット氏は15万ドルの障害給付金と弁護士費用を受け取ることが認められました。

本判決は、海外で働くフィリピン人船員の権利を保護する上で重要な意味を持ちます。会社指定医師の診断だけでなく、第三者医師の意見や、実際の就労不能期間が、障害補償の判断に大きく影響することを明確にしました。船員は、自身の健康状態を正確に把握し、適切な補償を受けるために、専門家の助けを求めることが重要です。

FAQ

この訴訟の主要な争点は何でしたか? 本件の主要な争点は、船員のレイナルド・スニット氏が、労働災害による障害に対して、完全かつ永久的な障害給付を受ける資格があるかどうかでした。特に、会社指定医師の評価と第三者医師の評価が異なる場合に、どのように判断されるべきかが問題となりました。
会社指定医師の評価に不満がある場合、どうすればよいですか? POEA-SECに基づき、船員は自身で選んだ医師の意見を求める権利があります。会社指定医師と異なる意見が出た場合は、使用者と船員が合意の上で第三者の医師を選任し、その判断を仰ぐことができます。
第三者の医師の評価は常に拘束力がありますか? いいえ、第三者の医師の評価が両当事者を拘束するためには、最終的かつ決定的なものでなければなりません。評価が不確定な場合、拘束力は認められません。
障害等級が部分的な場合でも、完全な障害給付を受けられますか? はい、障害等級が部分的な場合でも、船員が負傷または病気のために240日以上就労不能となった場合、法的には完全かつ永久的な障害と見なされる可能性があります。
POEA-SECとは何ですか? POEA-SEC(フィリピン海外雇用庁標準雇用契約)は、海外で働くフィリピン人船員の雇用条件を定める標準契約です。障害補償、医療、その他の労働条件に関する規定が含まれています。
弁護士費用は請求できますか? はい、本件では、スニット氏が自身の権利を守るために訴訟を起こさざるを得なかったため、合理的な弁護士費用が認められました。
240日という期間はどのように計算されますか? 240日という期間は、船員が本国に送還された日から起算されます。この期間内に会社指定医師が最終的な評価を下す必要があります。
本判決は、船員の権利にどのような影響を与えますか? 本判決は、フィリピン人船員の権利を強化するものです。会社指定医師の診断だけでなく、第三者医師の意見や、実際の就労不能期間が、障害補償の判断に大きく影響することを明確にしました。

本判決は、海外で働くフィリピン人船員の労働災害における障害補償の判断基準を示す重要な判例です。船員は、自身の健康状態を正確に把握し、会社指定医師だけでなく、第三者医師の意見を参考にしながら、適切な補償を受けるために必要な手続きを行うことが重要です。

本判決の特定の状況への適用に関するお問い合わせは、お問い合わせいただくか、frontdesk@asglawpartners.comまでメールでASG法律事務所にご連絡ください。

免責事項:この分析は情報提供のみを目的としており、法的助言を構成するものではありません。お客様の状況に合わせた具体的な法的ガイダンスについては、資格のある弁護士にご相談ください。
出典:REYNALDO Y. SUNIT, VS. OSM MARITIME SERVICES, INC., G.R. No. 223035, 2017年2月27日

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