未成年者に対する性的暴行事件:同意は弁解にならない
G.R. Nos. 123267-68, 1999年12月9日
性的暴行事件は、被害者の人生に深刻な影響を与える犯罪です。特に被害者が未成年の場合、その影響は計り知れません。フィリピン最高裁判所は、この問題に関する重要な判例を示しています。本記事では、People of the Philippines v. Anthony Apostol事件を基に、未成年者に対する性的暴行罪における同意の法的意味合いと、実務上の教訓を解説します。
はじめに
性的暴行事件は、しばしば当事者間の力関係や認識のずれによって複雑化します。特に、未成年者が被害者の場合、同意能力の有無が重要な争点となります。今回取り上げるPeople v. Apostol事件は、被告人が未成年者との性的関係を「合意」に基づくものと主張した事案です。最高裁は、この主張を退け、未成年者に対する性的暴行罪の成立要件と、同意が法的弁解とならない理由を明確にしました。本稿では、この判決を詳細に分析し、同様の事件における重要な教訓と実務上の指針を提供します。
法的背景:法定強姦罪とは
フィリピン刑法第335条は、強姦罪を規定しています。その第3項は、12歳未満の女性との性交を「法定強姦罪(Statutory Rape)」と定義し、暴行や脅迫の有無にかかわらず犯罪が成立すると定めています。重要なのは、被害者が12歳未満である場合、法律は被害者に同意能力がないとみなす点です。つまり、たとえ未成年者が性行為に同意したとしても、それは法的には無効であり、加害者は強姦罪に問われることになります。
刑法第335条第3項の条文は以下の通りです。
“3. When the offended party is under twelve (12) years of age.”
これは、被害者が12歳未満であれば、性行為そのものが犯罪となることを意味します。この規定の趣旨は、幼い子供を性的搾取から保護することにあります。最高裁判所は、過去の判例においても、この条項を厳格に解釈し、未成年者の保護を最優先する姿勢を示してきました。
事件の概要:People v. Apostol
本事件の被告人アンソニー・アポストルは、当時11歳のエイミー・タクヤンに対し、2件の法定強姦罪で起訴されました。訴状によると、アポストルは1993年9月1日と14日の2回にわたり、タクヤンを人里離れた場所に連れ込み、性的暴行を加えたとされています。タクヤンは母親に借金取りを頼まれ、アポストルの姉の家に行った際に最初の事件が発生しました。2回目の事件は、タクヤンが学校からの帰宅途中にアポストルに待ち伏せされ、姉の家に連れて行かれた際に起こりました。タクヤンは警察に保護され、事件が発覚しました。
裁判では、検察側がタクヤンの証言、母親の証言、医師の診断書などを提出し、アポストルの犯行を立証しました。一方、被告人アポストルは、タクヤンとの性的関係は合意に基づくものであり、2人は恋人関係にあったと主張しました。また、事件当時、タクヤンの両親も2人の交際を認識していたと述べ、道徳的に見て有罪判決は不当であると訴えました。
第一審の地方裁判所は、アポストルの主張を退け、2件の法定強姦罪で有罪判決を下しました。アポストルはこれを不服として最高裁判所に上訴しましたが、最高裁も地裁の判決を支持し、上訴を棄却しました。
最高裁判所の判断:同意は無意味
最高裁判所は、判決理由の中で、法定強姦罪の本質は被害者の年齢にあると強調しました。裁判所は、12歳未満の少女は法的に同意能力を持たないため、たとえ性行為に同意したとしても、それは法的には無効であると改めて確認しました。判決は、以下の最高裁判所の言葉を引用しました。
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