弁護士資格再取得の道:前科からの立ち直りと最高裁判所の判断

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過ちを乗り越え、弁護士としての道を再び歩む:最高裁判所の寛大な判断

バル・マター No. 810、1998年1月27日

弁護士の職業は、高度な知的、道徳的資質を持つ者にのみ認められる特権です。しかし、過去に過ちを犯した者が、その後の悔悛と更生によって、再びその資格を得ることは可能なのでしょうか?本稿では、フィリピン最高裁判所の判決「IN RE: PETITION TO TAKE THE LAWYER’S OATH BY ARTHUR M. CUEVAS, JR.」を基に、弁護士資格における道徳的適合性と、再出発の機会について考察します。

弁護士に求められる道徳性:単なる知識を超えて

弁護士は、単に法律知識を持つだけでなく、高い倫理観と道徳性が求められる職業です。フィリピンの法曹倫理規範は、弁護士が「高潔、公正、誠実、誠実さ」をもって職務を遂行することを求めています。これは、弁護士がクライアントの権利を守るだけでなく、司法制度全体の信頼性を維持する役割を担っているためです。

弁護士法(Rule 138, Section 2 of the Rules of Court)は、弁護士資格の要件として「善良な道徳的性格を持つ者」であることを明記しています。この「道徳的性格」は、単に犯罪歴がないことだけでなく、弁護士としての職務を公正かつ誠実に遂行できる人格を備えているかどうかを意味します。過去の非行歴がある場合でも、その後の行動や悔悛の度合いによっては、弁護士資格が認められる余地があります。

事件の経緯:過ちと悔悛、そして再出発の機会

本件の主人公であるアーサー・M・クエバス・ジュニア氏は、1996年の弁護士試験に合格しましたが、過去の過ちが原因で弁護士資格の取得が保留されていました。その過ちとは、1991年に発生したサン・ベダ大学法学部のフラタニティ「LEX TALIONIS FRATERNITAS」の入会儀式における傷害致死事件への関与です。クエバス氏は、新入生であったラウル・I・カマリガン氏に対する暴行事件に関与し、その結果、カマリガン氏は死亡しました。クエバス氏は、この事件で重過失致死罪で有罪判決を受け、執行猶予付きの判決を受けました。

その後、クエバス氏は執行猶予期間を問題なく満了し、事件は終結しました。1997年、クエバス氏は弁護士資格の取得を求めて最高裁判所に請願書を提出しました。この請願に対し、最高裁判所は被害者カマリガン氏の父親であるアティ・ギルバート・D・カマリガン氏に意見を求めました。カマリガン氏は、息子の死に対する悲しみは消えないものの、クエバス氏らの母親たちの懇願を受け、またキリスト教徒として彼らを許したと述べました。そして、クエバス氏の弁護士資格取得については、最高裁判所の判断に委ねるというコメントをしました。

最高裁判所は、クエバス氏の過去の行為を重大なものと認めつつも、以下の点を考慮し、弁護士資格の取得を許可する判断を下しました。

  • クエバス氏が執行猶予期間を問題なく満了し、更生に努めていること
  • 地域社会や関係者からの推薦状が多数提出され、その道徳的品性が証明されていること
  • 被害者遺族がクエバス氏の弁護士資格取得に反対していないこと
  • 若年時の過ちであり、悔悛の機会を与えることが相当であること

判決の中で、最高裁判所は次のように述べています。「裁判所は、若者の軽率さ、無鉄砲さ、無計画性という一般的な傾向を認識し、請願者に疑わしい場合の利益を与える用意がある。」

また、「弁護士の誓いは、カメラのフラッシュの中で、選ばれた証人の前で数分間唱えるだけの単なる形式ではない」と述べ、クエバス氏に対し、常に非難されることのない行動を心がけ、誓いと専門職責任規範に厳格に従って生活するよう強く促しました。

実務上の教訓:再出発を可能にするために

本判決は、過去に過ちを犯した者であっても、その後の悔悛と更生次第で、弁護士資格を再び取得できる可能性があることを示唆しています。重要なのは、過去の過ちを真摯に反省し、その償いをすること、そして、社会に貢献する意思と能力を示すことです。弁護士資格は、単なる知識の証明ではなく、社会からの信頼の証であるということを、改めて認識する必要があります。

主な教訓

  • 弁護士には高い道徳性が求められる。
  • 過去の過ちも、悔悛と更生によって克服可能。
  • 社会への貢献意欲と行動が重要。
  • 弁護士資格は社会からの信頼の証。

よくある質問(FAQ)

  1. 過去に犯罪歴がある場合、弁護士になれますか?
    犯罪の種類や内容、その後の悔悛の度合いによります。重大な犯罪や弁護士としての適格性を疑わせる犯罪歴がある場合は難しいですが、本件のように、若年時の過ちで、その後十分に更生していると認められる場合は、可能性はあります。
  2. 執行猶予期間満了は、弁護士資格取得に有利に働きますか?
    はい、有利に働きます。執行猶予期間を問題なく満了することは、更生への一歩と評価されます。
  3. 弁護士資格審査では、どのような点が重視されますか?
    学力だけでなく、道徳性、人格、社会への貢献意欲などが総合的に評価されます。
  4. 過去の過ちを償うためには、具体的に何をすればよいですか?
    ボランティア活動、地域社会への貢献、関係者への謝罪、再発防止のための努力など、具体的な行動を示すことが重要です。
  5. 弁護士資格取得を諦めるべきケースはありますか?
    重大な犯罪を犯し、反省の色が見られない場合や、弁護士としての適格性を著しく欠く場合は、難しいかもしれません。しかし、諦めずに専門家にご相談ください。

ASG Lawは、フィリピン法務に精通した専門家集団です。弁護士資格に関するご相談、その他フィリピン法務に関するご質問は、お気軽にお問い合わせください。

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Source: Supreme Court E-Library

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