情報開示義務:株式会社役員による記録閲覧拒否の法的責任

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株式会社の情報公開義務は、取締役、監査役、株主が会社の記録を検査し、その一部をコピーする権利を保護しています。この権利の侵害は、会社の役員や代理人に対して法的責任を問う可能性があります。本件では、最高裁判所は、株式会社の役員が株主からの記録閲覧の要求を不当に拒否した場合、会社登記の取り消しがあっても、役員の責任は免れないとの判断を示しました。これは、情報公開の透明性を確保し、株主の権利を保護するための重要な判例です。

取り消しがあっても免れない情報公開義務

本件は、Barangay Mulawin Tricycle Operators and Drivers Association, Inc. (BMTODA)という団体の会員であるOscar Ongjoco氏が、団体の資金が不明になっていることを知り、団体の記録の閲覧を要求したことに端を発します。しかし、当時の会長であるAlejandro Roque氏と書記のRosalyn Singson氏は、この要求を拒否しました。Ongjoco氏は、Roque氏とSingson氏を法人法の第74条および第144条の違反で訴えました。地方裁判所は当初、団体の法人としての存在が証明されていないとして訴えを退けましたが、控訴院はこの判決を覆し、BMTODAが正式に登録された法人であることを認めました。最高裁判所は、Roque氏の上訴を退け、控訴院の決定を支持しました。この判決は、会社登記が取り消されたとしても、その取り消し前に発生した情報公開義務違反の責任は免れないことを明確にしました。

この判決において重要なのは、法人法の第74条が定める情報公開の義務です。この条項は、株式会社の取締役、監査役、株主が会社の記録を閲覧し、その一部をコピーする権利を保障しています。情報公開義務の違反は、会社に損害を与えるだけでなく、会社の透明性を損なう行為とみなされます。この義務を怠った役員や代理人は、損害賠償責任を負うだけでなく、刑事責任を問われる可能性もあります。

法人法第74条:会社の記録を保管し、株主または会員が記録を検査およびコピーすることを拒否する役員または代理人は、損害賠償責任を負うものとし、さらに、本法の第144条に基づいて処罰される犯罪を犯したものとみなされる。

最高裁判所は、本件において、Ongjoco氏がBMTODAの会員として、団体の記録を閲覧する権利を有していたことを認めました。Ongjoco氏は、Roque氏とSingson氏に書面で記録のコピーを要求しましたが、両氏はこれを拒否しました。Roque氏は、BMTODAの登録が取り消されたため、法人としての義務は消滅したと主張しましたが、最高裁判所はこの主張を認めませんでした。裁判所は、BMTODAの登録が一時的に取り消されたとしても、Ongjoco氏の要求がなされた時点では登録が回復していたことを指摘しました。また、会社の登録取り消しは、それ自体が会社としての権利や義務を消滅させるものではないと判示しました。

本件で最高裁は、BMTODAの登録抹消という状況にもかかわらず、Roque氏に情報公開義務違反の責任を問うことができると判断しました。この判断は、単に形式的な法人格の有無だけでなく、実質的な権利義務関係を重視する姿勢を示しています。Roque氏はSingson氏の拒否行為を主張しましたが、裁判所はRoque氏自身もOngjoco氏の要求を拒否した事実を認め、個別の行為として責任を負うべきであると判断しました。このように、裁判所は、情報公開の義務を厳格に解釈し、会社の役員がその義務を適切に履行する責任を強調しました。情報公開は、会社の透明性を高め、ステークホルダーの信頼を得る上で不可欠です。この判決は、フィリピンの会社法における情報公開義務の重要性を改めて確認するものです。

本件の主要な争点は何でしたか? 株式会社の役員が株主からの記録閲覧の要求を拒否した場合、会社登記の取り消しがあっても、役員の責任は免れるかどうかが争点でした。
法人法の第74条は何を規定していますか? 法人法の第74条は、株式会社の取締役、監査役、株主が会社の記録を閲覧し、その一部をコピーする権利を保障しています。
最高裁判所はどのような判断を下しましたか? 最高裁判所は、会社登記の取り消しがあっても、役員の責任は免れないとの判断を示しました。
なぜ最高裁判所はそのような判断を下したのですか? 最高裁判所は、会社登記の取り消しは、それ自体が会社としての権利や義務を消滅させるものではないと判断したからです。また、Roque氏自身もOngjoco氏の要求を拒否した事実を重視しました。
情報公開義務の違反はどのような結果を招きますか? 情報公開義務の違反は、損害賠償責任を負うだけでなく、刑事責任を問われる可能性があります。
本件の判決は、株式会社の情報公開にどのような影響を与えますか? 本件の判決は、株式会社の情報公開義務の重要性を改めて確認するものであり、役員は情報公開義務を厳格に履行する責任があることを明確にしました。
Ongjoco氏が記録閲覧を要求した理由は? Ongjoco氏は、団体の資金が不明になっていることを知り、その原因を究明するために記録の閲覧を要求しました。
Roque氏の主な主張は何でしたか? Roque氏は、BMTODAの登録が取り消されたため、法人としての義務は消滅したと主張しました。
控訴院の決定はどのようなものでしたか? 控訴院は、BMTODAが正式に登録された法人であることを認め、地方裁判所の判決を覆しました。

本判決は、株式会社における情報公開の重要性を強調し、役員がその義務を怠った場合の責任を明確にしました。企業は、透明性の高い経営を心がけ、ステークホルダーからの信頼を得ることが重要です。

本判決の具体的な状況への適用に関するお問い合わせは、お問い合わせいただくか、frontdesk@asglawpartners.comまでメールでご連絡ください。

免責事項:この分析は情報提供のみを目的としており、法的助言を構成するものではありません。お客様の状況に合わせた具体的な法的ガイダンスについては、資格のある弁護士にご相談ください。
出典:ALEJANDRO D.C. ROQUE V. PEOPLE, G.R No. 211108, June 07, 2017

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