周知されていない社内規定による解雇は違法となる場合がある:フィリピン最高裁判所判例

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周知されていない社内規定による解雇は違法となる場合がある

G.R. No. 121975, 1998年8月20日

従業員が選挙に出馬した場合、会社は従業員を辞任とみなすという未公開の社内規定は、従業員に適切に通知されていない場合、違法解雇につながる可能性があります。この最高裁判所の判例は、企業が従業員の権利と管理権限のバランスをどのように取るべきかを明確に示しています。

法的背景:適法な命令と管理権限

フィリピン労働法典第282条(a)は、雇用主の正当な命令に対する意図的な不服従を解雇理由としています。しかし、最高裁判所は、解雇が正当化されるためには、従業員の行為が意図的であり、違反された命令が(1)合理的かつ合法的、(2)従業員に周知されている、(3)従業員が従事する職務に関連している必要があると一貫して判示しています。

本件の核心は、未公開の社内規定、すなわち「公職選挙に立候補する従業員は辞任とみなす」という規定の有効性です。共和国法(R.A.)第6646号第11条(b)は、報道機関のコラムニストや解説者に対し、選挙期間中の休職を義務付けていますが、辞任までは要求していません。しかし、会社は政策として辞任を要求できるのか、そしてそのような政策は従業員に拘束力を持つのかが問題となりました。

最高裁判所は、会社が従業員に辞任を要求する政策を持つことは、原則として違法ではないと認めました。裁判所は、企業側の主張する「政府と会社の両方に同時に勤務することは、会社だけでなく国民の権利と利益にとっても明らかに不利であり、有害である」という理由を認めました。しかし、重要な点は、そのような社内規定が従業員に有効となるためには、事前に周知されている必要があるということです。

事件の概要:未公開の社内規定と解雇

私的被申立人であるサミュエル・L・バングロイは、ラオアグ市にあるDZJC-AMラジオ局の制作主任兼ラジオ解説者でした。このラジオ局は、請願人であるマニラ・ブロードキャスティング・カンパニー(MBC)が所有しています。

1992年2月28日、バングロイは「イロコス・ノルテ州の州議会議員選挙に出馬する」ため、50日間の休暇を申請しました。彼は共和国法第6646号第11条(b)に基づき申請を行いました。

しかし、1週間後、バングロイの休暇申請は、人事・総務担当のアシスタント・バイス・プレジデントであるユージン・ジュシからFJEグループの執行副社長兼総支配人であるエドガルド・モンティラ弁護士宛の社内覚書とともに返却されました。その覚書には、「社内規定」として、国政または地方選挙の公職の立候補証明書を提出した従業員は、会社を辞任したものとみなされると記載されていました。

バングロイは選挙に出馬しましたが落選。1992年5月25日、彼は職場復帰を試みましたが、会社は彼の雇用はすでに終了しているとして、これを認めませんでした。その後、バングロイは違法解雇として訴えを起こしました。

労働仲裁人および国家労働関係委員会(NLRC)は、当初バングロイの訴えを認め、復職と損害賠償を命じました。NLRCは後に損害賠償命令を取り消しましたが、復職命令は維持しました。MBCはこれに対し、最高裁判所に上訴しました。

最高裁判所は、NLRCの決定を一部修正し支持しました。裁判所は、会社には従業員が公職選挙に立候補した場合に辞任とみなすという政策を定める権利があることを認めましたが、重要なことは、この政策が従業員に周知されていなかった点を重視しました。

裁判所は、放送局のマネージャーであるメディ・ロレンツォの証言を引用し、そのような政策が書面で従業員に通知されていなかったことを確認しました。バングロイ自身も、そのような政策を知らなかったと証言しています。

最高裁判所は、以下の点を強調しました。

「請願人は、問題の政策を書面化することを適切と見なしたことがないようです。請願人は従業員の休暇に関する規則を持っていますが、公職選挙に立候補を希望する従業員に関する政策は、規則に正式に組み込まれたことはありません。公職選挙に立候補する従業員を辞任とみなすという重要な規則は、その存在を確実なものとし、その範囲を明確にするために、書面化され、公開されなければなりません。そうしなければ、政策の執行は、会社のさまざまな事務所や部門の責任者の裁量に委ねられているという印象を与える可能性があります。さらに、そのような未公開の規則は誤解を受けやすく、対象となる人に真剣に受け止められない可能性があります。」

裁判所は、社内規定が従業員に周知されていなかったため、バングロイの解雇は違法であると判断しました。ただし、バングロイが休暇申請日数を超過したことについては、1ヶ月の停職処分が相当であるとし、バックペイの支払期間を修正しました。

実務上の教訓:明確な社内規定と周知の重要性

この判例から企業が学ぶべき最も重要な教訓は、社内規定、特に従業員の権利に影響を与える可能性のある規定は、書面化し、すべての従業員に明確に周知徹底する必要があるということです。口頭での伝達や非公式な通知だけでは不十分であり、従業員が規定の内容を理解し、遵守できる状態にすることが不可欠です。

選挙への立候補に関する規定のように、従業員のキャリアに大きな影響を与える可能性のある規定は、特に注意が必要です。これらの規定は、就業規則に明記し、従業員への説明会や書面での配布などを通じて、確実に周知する必要があります。

また、企業は、従業員が社内規定について疑問や不明点を持っている場合に、気軽に相談できる体制を整えることも重要です。人事部門や上司が、従業員からの質問に適切に対応し、誤解を解消することで、不必要な労使紛争を未然に防ぐことができます。

キーポイント

  • 未公開の社内規定は無効:従業員に周知されていない社内規定は、従業員を拘束せず、その規定を理由とした解雇は違法となる可能性があります。
  • 書面化と周知の徹底:重要な社内規定は必ず書面化し、すべての従業員に効果的に周知徹底する必要があります。
  • 管理権限の限界:企業は管理権限を持つ一方で、従業員の権利を尊重し、公正な手続きを守る必要があります。
  • 明確なコミュニケーション:従業員とのコミュニケーションを密にし、社内規定に関する疑問や不明点を解消することが重要です。

よくある質問(FAQ)

Q1: 会社は従業員が公職選挙に立候補した場合、解雇できますか?

A1: 原則として、会社が従業員が公職選挙に立候補した場合に辞任とみなすという明確で周知された社内規定があれば、解雇は適法となる可能性があります。しかし、規定が周知されていない場合、解雇は違法となる可能性が高いです。

Q2: 口頭での社内規定は有効ですか?

A2: 口頭での社内規定も、従業員に明確に伝達され、周知されていることが証明できれば、有効と認められる場合があります。しかし、書面化された規定に比べると、有効性を証明することが難しく、紛争のリスクが高まります。重要な規定は書面化することが推奨されます。

Q3: 違法解雇と判断された場合、従業員はどのような救済を受けられますか?

A3: 違法解雇と判断された場合、従業員は復職、バックペイ(解雇期間中の賃金)、精神的苦痛に対する損害賠償、弁護士費用などの救済措置を受けることができます。本件では、復職とバックペイが認められました。

Q4: 従業員が社内規定を知らなかった場合、会社は責任を免れますか?

A4: いいえ、会社は社内規定を従業員に周知徹底する責任があります。従業員が規定を知らなかったとしても、会社が周知義務を果たしていなければ、責任を免れることはできません。

Q5: 会社が社内規定を有効にするために、どのような対策を講じるべきですか?

A5: 会社は、社内規定を書面化し、就業規則に含める、従業員説明会を開催する、社内ネットワークや掲示板で公開する、入社時に規定を説明し同意書を取得するなどの対策を講じるべきです。重要なのは、すべての従業員が規定の内容を理解し、アクセスできる状態にすることです。

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Source: Supreme Court E-Library
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